30才からの少女

30才からの少女

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written by 匿名


私がトランスジェンダーとして生きる決意をしてホルモン投与を始めたのは30歳を目前に控えた年齢のこと。
それまでも女性として生きたいと望み続けていたのですが、私は諸事情から社会においても家庭においても障壁が大きく、トランスに意識を置けるだけのゆとりはどこにもありませんでした。それまでの人生で培った女性としての素養はほとんど無く、30才からどうすれば大急ぎでパス度を上げられるのかと途方に暮れました。

社会的な常識は事務職で身につけようと考えついたものの、当時の状況ではとても女性として事務職に就く事はできなかったので、障害者手帳を使った福祉就労を利用しました。
事務員の方の目のある環境でコーディネート研究ができたことは大きなプラスとなりました。マナー関連の本を読んだり細かいふるまいの観察からパス度は向上したと思います。

行動するとパス面での粗がでやすく最大の敵は決まり事の多いフォーマルな場。生まれながらの戸籍上女性が長い年月をかけて勉強や人との交流、趣味や習い事などを吸収してようやく身につくものに数年で近づこうと思ったのですから、簡単なことではないと感じました。

男性的な趣味から距離を置くこともしました。
趣味の物を捨てたり、アクション映画鑑賞の自粛といったことも試しました。女性でもアクション映画は観ますし、最近は筋トレなども流行っていますけど、30才近くまで男性として生きた私にとっては試す価値のある実験だと判断しました。幼少期の育った環境に差があるのですから、特殊な努力は有効かと思いました。

今の私は色んな点で男性として見られることは無くなってきたものの、女性グループに違和感なく溶け込めるだけの自信はありません。女性の輪の中に埋没し、ささやかな幸せを築ける日が訪れることを目標にして、これからも生きていきたいと思います。


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