意外と皆にばれている(カミングアウト)
written by ショウ
気づいていないのは父くらいなもので、実は周囲は私よりも私の性自認を理解していた。
私(FTM)のカミングアウト。
当時SNSで仲間を見つけ、自分だけではない、多くの同じ悩みを抱えている人がいるということを初めて知った。
パンドラの箱を開けてしまうような恐怖で、調べることができないでいた私にとっては、ここでの出会いが大きな救いになった。 多くの当事者たちと交流を重ね、互いの経験と悩みについて言葉と酒を交わす日々。
交流会で出会った当事者の方の勧めで、最良のクリニックと出会うこともできた。
そしていよいよカミングアウト。最初は絶対に家族と私は決めていた。
受け入れてもらえない可能性も考慮し、少しの着替えと全財産をカバンに詰め、出がけに「手紙」と「当事者の方の本」を添えて母に渡した。
手紙には素直にこれまでの経緯、今後どう生きていきたいかを綴り、最後に下記のような内容を書いた。
「もし今すぐに受け止められない、しばらく距離を置きたいと家族のだれか1人でも感じるようであれば、無理強いはできない。けどもう自分も自分に嘘を付けないから、その時は今日このまま家を出る。
これまでの日々、家族には感謝している。」
結果、父以外は私の性自認に気づいていて、驚きはしたけどずっと前からカミングアウトされる覚悟をしていた。
父だけはゲームとサッカーと下ネタの好きな女の子だと思っていたと、衝撃だったらしい。
家に帰っておいでと、連絡をもらって、私の家族へのカミングアウトは終わった。
事前にワンウィークタイプの一時的な宿泊の契約方法を調べ、翌週末にでも一人暮らしの住居の契約ができるよう、貯金もしていた。家族・周囲の友人たちとの絶縁パターンの心の準備もして臨んだ、計画的カミングアウトは、あっけなく最善の結果に終えることとなり、私は恵まれていることに感謝した。
それ以外のカミングアウトなんて、この覚悟以上のものなどあるわけもなく。
開き直り自信を持った私は、幼馴染、友人、同僚、今後も付き合っていく人たちに順次、焦らずタイミングのあうときにカミングアウトしていった。
- 幼馴染 → いつまでうだうだしているのかと、呆れていた。
- 幼馴染の親 → 初めて会った時から気づいていた。まだ治療しないのかと不思議だった。
- 学生時代からの友人 → 知ってた、気づいていた。話してくれるのを待っていた。
- 同僚 → へぇ。隠してるつもりだったんだ?うける。
- 上司 → うん?気づいていたけど?折り入った話ってそのこと?大したことじゃなくて良かった←
…父以外は私の性自認にとっくに気づいていて(3回目)悩んだ時間はなんだったのかと改めて思うのと同時に、周囲の人に恵まれていたことに、深く感謝した。23歳ごろの話だ。
今は戸籍も変え転職し、私が当事者であることを知る人は1人もいない環境に身を置いている。自分でさえ忘れがちだ。
私はカミングアウトについては、自分自身の「覚悟」が座るまで焦る必要はないと思っている。
様々な人が、様々な事情を抱え、悩み苦しんでいることは理解している。カミングアウトは誰しも大小抱える悩みだ。
ハッピーエンドは耳障りかもしれない。
ただ周囲の人に恵まれた幸運な私のようなラッキーもあるかもしれないと、少しの希望も頂いて良い。
だって、ひたすらバッドエンドしか見えていないでしょう?当時の私もそうだった。必死だった。
どんなに周りの当事者に相談したって、結局最後は自分との決着。
私自身「覚悟」と「念入りな計画」そして「現金」が踏み出す勇気につながった。
どんな結果になったって、明日ご飯を食べて、治療とその先の未来に向けて前に進める。
明日の自分はどう生きたいのか。
今まだカミングアウトに悩んでいる方。
自分との対話、覚悟、生活の基盤を整えることから始めてみてはいかがでしょうか。