戸籍の性別訂正要件に関する公式見解

戸籍の性別訂正要件に関する公式見解

Posted by jimukyoku 日時 2003/02/01

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戸籍の性別訂正の話を持ち出すと、まずこの要件をどうするかという話がすぐに始まります。でも、性同一性障害をかかえる人と言っても、実は様々な方がいらっしゃいます。みんな同じように苦しんでいます。そして、多くの方は戸籍を変えて欲しいと思っています。それをどうして当事者が同じ当事者をあなたはいい、あなたはダメって区別することができるでしょうか?それって、差別じゃないのでしょうか。要件に入らない人を見捨てることができましょうか。
私たちにはできません。だって同じ仲間なんですから。

また、要件を提示するということは、議論の出発点がそこからになり、その要件より更に厳しくなることはあっても、決して緩くなる方向には行かないでしょう。ですから、当事者運動のあり方として、自分たちの側から要件を持ち出すのは誤っているのではないでしょうか。私たちは、戸籍とは異なる性で社会で暮らしています。でも戸籍が変わらないため様々な齟齬が生じています。そのため多くの不利益を被っています。ですから、この齟齬を解消するために、戸籍を変えて欲しい。要求はそれで充分ではないでしょうか。

もちろん、性別訂正に関する審議が進めば、いろいろ要件を付加される可能性は充分あります。私たちは理想主義者ではありませんから、それで法案が通るのであればある程度の妥協を選択するでしょう。でも、そうした場合でも「苦渋の決断として」その要件を受け入れることでなければいけないと思っています。そうすることが、次回の見直しへとつながっていくからです。

ただ、なんでも妥協すればよいというものではないでしょう。やはりある程度の数の方を救えるものでなければならないのは当然です。それと、「過去にすでに起きてしまったこと」「自分の努力ではどうにもならないもの」は、どうしても要件として認めさせてはならないと考えています。例えば、海外で性別適合手術をした、子どもがいる、婚姻したことがある、など。こうした過去に起きてしまったことは、今更消すことはできません。両親や兄弟の承認も、自分の努力だけではどうにもならない状況もあるでしょう。
こうしたことは要件として認めることはできません。
いわゆる大島3要件として知られる、神戸学院大学の大島俊之教授が提唱されている要件は、ひとつの見識ではあると思います。

・性別適合手術済みである
・性同一性障害との診断を受けている
・性別訂正する時点で婚姻していない
 

でも、最初から妥協するラインを定める必要はありません。
こうした意味で、「当事者運動のあり方」として、私たちは大島要件を持ち出すことは考えていません。
繰り返しになりますが、できるだけ多くの当事者の方に幸せになって欲しい。そのために、戸籍を変えて欲しい。
これが願いであり思いなのです。

性同一性障害をかかえる人々が、普通にくらせる社会を目指す会 代表 山本 蘭