性同一性障害当事者に対するマイナンバー運用に関する要望書2015|内閣総理大臣・内閣府・総務省・厚生労働省・ 法務省・国家公安委員会

性同一性障害当事者に対するマイナンバー運用に関する要望書2015|内閣総理大臣・内閣府・総務省・厚生労働省・ 法務省・国家公安委員会

Posted by jimukyoku 日時 2015/10/16

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一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会は、2015年10月16日、政府に対して「性同一性障害当事者に対するマイナンバー運用に関する要望書」を提出致しました。
まもなく運用が開始されるマイナンバーですが、この制度は、性同一性障害の当事者や性別違和を持つ者にとって、大きな影響があると考えられます。
実施によって当事者が不利益を被らないよう、政府に対応を求めていきます。


性同一性障害当事者に対するマイナンバー運用に関する要望書

 
内閣総理大臣     安倍 晋三 様
内閣府特命担当大臣  甘利 明 様
総務大臣       高市 早苗 様
厚生労働大臣     塩崎 恭久 様
法務大臣       岩城 光英 様
国家公安委員会委員長 山谷 えり子 様

 

要望内容

下記の性同一性障害治療における性別適合手術およびホルモン療法に対して健康保険の適用をお願い致します。

  1. マイナンバー通知カードから、性別欄を削除してください。間に合わない場合は、性別欄を隠すシールなどを準備してください。本人確認に、性別は必要ではありません。性別欄の無い自動車運転免許証を本人確認に使用するのであれば、尚更意味がありません。性別欄を隠すフォルダが検討されているようですが、その対応ではフォルダから抜かれてしまった時に意味をなしません。
  2. マイナンバー個人カードの性別欄はIC チップ上のみの情報とし、表面的な記載からは削除してください。医療など特別な場合を除いて、個人特定に性別情報は不要です。性別は本籍と同様なセンシティブな個人情報であるという認識を持ってください。
  3. 戸籍の性別変更後は、番号の変更を可能としてください。将来的に番号が民間に開放されると、番号が情報として蓄積され、紐つけられて性別変更前の性別がわかってしまい、不利益を生じる可能性があります。
  4. マイナンバーカードを提示することにより知り得た性別や戸籍名などの個人情報を漏洩させた個人や企業は、厳罰に処してください。また、そうした事態が起きた場合は、番号の変更を可能としてください。現在、番号自体の流出には罰則が定められていますが、性別など同時に取得した情報については罰則がありません。特に、総務担当者などによる社内への流出を危惧しています。
  5. 民間への利用は慎重に行い、番号から個人の過去の性別などの履歴を把握できるようなデータベース利用は、絶対に認めないでください。銀行などが利用するようになると、ローン審査やクレジットカード申込等でも利用され、データベースとして蓄積されて性別変更したことがわかるようになってしまいます。
  6. マイナンバーカードに記載された性別と現状就業先に届け出ている性別が異なっても、私文書偽造などの罪には問わないでください。また、このことを事由とした解雇は、絶対に認めないでください。そのために、事業主に対する周知の徹底をお願いいたします。性別を、戸籍上ではなく社会生活上の性別で申請して働いている当事者は数多く存在します。
  7. マイナンバーカードを提示することによって解雇されたり、提示を回避するために自主退職して、再就職が困難な当事者に対する、生活保護等の支援策を検討してください。合わせて、マイナンバー制に起因する就業上の問題や就職に関して、相談や支援可能な体制を早急に確立してください。万一職を失うことになれば、生活できなくなる可能性が高確率であります。

要望の理由

平素は、性同一性障害の問題にご尽力いただき、心より御礼申し上げます。
私たちは、全国に1500名の会員を有する性同一性障害の当事者団体です。
本年10月5日、マイナンバー(社会保障・税番号)制度が施行されました。この法律は行政の効率化を実現し、それによって便利になる部分がある反面、私たち性同一性障害の当事者にとって、大きな影響が及ぶものと思われます。性同一性障害の当事者は、身体上の性、社会生活上の性と精神の性が一致しないことにより、多大な苦痛・苦悩を有しています。そのため戸籍上の性別ではなく、性自認の性別や現状の社会生活上の性別を告知して就労している場合があります。
今回のマイナンバー制度では、雇用主に戸籍上の性別が記載されたマイナンバーカードを提示しなければならないとされていますが、そうなると、カードに記載された性別と社会生活上の性別が異なることがわかってしまい、混乱を生じたり最悪退職に追い込まれるなどの不利益を受ける可能性があります。それ以前に、性自認と異なる性別記載のあるカードを提示すること自体が苦痛であり、抵抗がありますし、戸籍上の性別などの情報が漏洩して、誹謗中傷やいじめにあったり、職場での関係が崩れるようなケースも想定されます。更に、将来的にマイナンバーの運用が進み民間利用も行われるようになれば、マイナンバーの情報が蓄積され、性別変更や名の変更を行った場合にも、過去の性別や名前が履歴として参照され、個人のプライバシーが大きく損なわれることになります。
当会が、本年9月に実施したマイナンバーに関するアンケートでも、43%もの当事者が問題が起きるだろうと予想し、34%の人が何がおきるかわからないので、見せたくないと回答しており、このままでは自殺するしかない、餓死するかもしれないなどの悲壮な訴えも寄せられています。
マイナンバーにより、確かに便利になるのかもしれません。しかし、その制度によって人が不幸になったり傷つけられるようなことがあってはならないはずです。ぜひともマイナンバーの運用に際し、通知カードから性別欄を削除するなど性同一性障害の当事者に対する配慮と、不利益を受ける者に対する補償と支援をご検討いただきたく、お願い申し上げます。

平成27年10月16日
一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会 代表
山本 蘭