第7回公開フォーラム「厚生労働省令説明会」ダイジェスト

第7回公開フォーラム「厚生労働省令説明会」ダイジェスト

Posted by jimukyoku 日時 2004/07/12

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2004年6月20日行いました、第7回公開フォーラム「厚生労働省令説明会」の主な内容をお知らせします。

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開始 14時00分~  
総合司会松村氏 式次第、撮影等の諸注意、中島先生欠席などの説明
来賓挨拶  
高木美智代議員
古屋範子議員
山花郁夫議員
「特例法は様々な障害を乗り越えて作った法律、また三年後の見直しを考えていきたい。」
性別欄削除などにおいて小金井市の鈴木ひろ子議員をはじめ各地の議員さんの活躍を紹介
都合により遅れてのご来場のため、挨拶は後ほどとなる
厚労省担当者による講演
厚労省田中氏 特例法、厚労省令などを読み上げながらポイントを説明
「診断を的確に出来る医師とは、日本においてICD-10や日本精神神経学会のガイドラインについて知見、診断、治療の経験のある精神科医で、日本の医師法に基づいて医師の資格を認められた者」
「診断書の参考様式は、明日厚生労働省のホームページに、Word形式のものを掲載する」
「FTMの手術は、必ずしも第2段階(陰茎形成)まで求めるものではない。最高裁もマイクロペニスでも可という見解。」
「診断書の連名については、作成に時間が掛かるので連名でも構わない。」
「外国語診断書を別添する場合、その診断書の内容が正当であることが日本語の診断書から分かるようにする。
シンポジウム 15時10分~  
阿部精神科医
「診断書の作成について、1人目を作成したが4時間掛かった。現在35名が順番待ち。日曜日1日で3~4人、もう少し予定より早く書けるかもしれない。オピニオンの作成も溜まっていてお待たせしている。」
「医療の正当性・妥当性について、GIDの診療自体が正当性や妥当性を疑う余地のないところであるはずなのに、もう一度考えないといけないのか。」
「本人以外の情報提供者について、たまにパートナーなど同伴される方もいるが、大半はこの問題を一人で抱えているのが現状なので、聴き取りはかなり難しい。」
「FTMの第2段階の手術(陰茎形成)について、この項目は削除しないと裁判所側はあって当然という判断をしかねない、ぜひ今のうちに削除していただきたい。」
塚田精神科医
「診断書の作成について、30名以上の方が診断書待ちの状況で、忙しくて何時倒れるかわからない。」
「診断書の連名については、まったく知らない医師同士では難しい。性別変更に関して、地方の大学病院の医師からも問い合わせがあるが、連名ではなく独自に書いてくださいと答えている。その結果、診断書の内容が同じであれば連名でも良い。」
原科形成外科医
「SRSを行ったのは25例、しかし倫理委員会に出さなくてもよくなったFTMの乳房切除については、2002年10月~2004年6月までで73例も行っている。」
「FTMの膣閉鎖については、希望する患者さんは多いが浸襲もあり考えるべき問題。」
MTF当事者
「東京高裁で正式に却下されたが、それを契機に現在の戸籍訂正への機運が盛り上がってきた。」
「闇などで治療を受けてきた人はどうなのか?」
「法律や省令と違って、法的根拠のない通達(記載要領)は、必ずしもそれに従わなくても医師のオリジナリティを発揮して診断書を記載しても良いのではないか。」
FTM当事者
「FTMの手術は、本人の希望もあるが大抵は2回では終わらない。埼玉医大で睾丸を入れるところまでで3回。海外では少しずつ形成を重ねて7回くらいやることも普通。」
「専門家の条件を満たしても、「名の変更(改名)」のように裁判官の誤解や偏見、無理解な行動はないのか?」
「過去に闇で手術をして、ドクターからカルテなど取り出すことが難しい人の場合はどうなるのか?」
山花郁夫議員
「性別等については、最近は個性ととらえる動きがあり、厚労省だけの話ではなく、教育の現場や裁判官になる人の教育の課程(ロースクールのカリキュラムなど)や家裁調査官補の試験の中に、この問題を取り入れることが必要。」
厚労省田中氏
「どういった診断書(様式)になるのかは、現在裁判所と詰めているところで、5月に発表したものは あくまで参考様式であり、これでなくてはダメと言うわけではない。今後記載例を出していく中で変わることも充分ある。」
「診断書については、法律上2人以上の医師が診断をしなくてはいけないということで、2人の医師によってそれぞれ診断が行われているということである。従って参考様式に日付を記入する欄が1箇所しかないのは変だ。」
「親族など第三者からの聴き取りについては、裁判所に確認したところ「個人の人格に係わる重大な問題であり、また家族とは基本的に関係のない問題なので最終的には聴取の必要はない」と聞いている。」
「医師については、国で認定するという案もあったが手続上行政的にも大変になり、倫理委員会のように時間が掛かってしまう。」
「海外での手術について、記載要領には「国内で治療を受けないといけないとは書かれていない。」
「闇での手術について、過去の手術記録を取り出せない、またその時の医師に診断書を書いてもらえない場合には、別の医師に生殖腺など現在の機能、身体の状況についてに診断をしてもらうということで足りるのではないか。」
「裁判所への指針について、今回のお話しは最高裁の事務局からのもので、実際に審判するのは家庭裁判所になる。通知のような物を出すことは難しいが、特例法施行にあたって、親族などからの聴き取りは必要ではない、などの考え方は事務連絡として示されている。
当事者団体 代表質問  
gid.jp代表山本蘭
Q「この診断書を書く特例法上の「充分な知識と経験を持った医師」というのは、誰がどう判断するのか?」
厚労省田中氏
A「当初この医師については、基準を作って厚生労働大臣が指定をして欲しいという案もあったが、手続き上時間が掛かってしまう。逆に裁判所側が、名前の知らない医師の診断書が提出された場合に、戸惑ってしまうかもしれないが、あくまで(診断書)記載の中から判断するということだと思う。」
gid.jp代表山本蘭
Q「日本精神神経学会に、「診断書を書いた医師はどういう医師か」という問い合わせがある可能性が高いのではないか?」
塚田精神科医
A「難しいと思う。膨大な会員(医師)の中から、その医師がどういう経歴を持っているかなど調べるというのは、おそらく前例がない。」
gid.jp代表山本蘭
Q「外国の診断書について、現在ドイツで働いていて、当地のジェンダークリニックで診断を受けている方からの質問で、このように充分な知識と経験を持った「外国の医師の診断」を受けている場合、国内で短期間に診断書を書いてもらうことは可能か?」
阿部精神科医
A「診断書を見せていただかないと・・・。おそらく1~2回では終わらない。」
塚田精神科医
A「医師法で「本人と面接しないで診断を出してはいけない」となっている。しかし詳細な治療記録などお持ちいただければ非常に大きな参考になるし、診断手続きの時間短縮ができるのではないか。」
gid.jp代表山本蘭
Q「社会的適合能力や、パスしているかなどについては特例法の要件に入っていないが、性同一性障害者で5つの要件を満たしていれば診断書を書いてもらえるか?」
阿部精神科医
A「適合状況と診断とは関係ありません。」
塚田精神科医
A「診断に関しては、適合状況やパスは関係ない。ただし治療の段階の中で、性別に関係なくアルバイトでも社会参加をするように求めている。」
ESTO代表真木氏
Q「記載要領で「性行動歴」の削除を求めてきたが、残されてしまった理由は?」
厚労省田中氏
A「現在のガイドラインにあるからで、今後ガイドラインの改訂と共に法律の内容も見直されるかもしれない。」
ESTO代表真木氏
Q「生物学的な性別でどのように適合してきたか、について。適合できなかったから申し立てをするのに、どうして「してきたか」という記述なのか?」
厚労省田中氏
A「法律的な言葉遣いの問題で「適合してこられなかったか」とは普通言わない。これは適合してこないといけないという意味ではない。」
塚田精神科医
A「例えば、FTMで男性の服装をしているが、周囲の目もあって女子トイレに入ったら男性と間違えられ通報されたなど、如何に「女性として適合できなかったか」を示せばよい。」
ESTO代表真木氏
Q「職業的利得というのは、どのようなケースを想定しているのか?」
厚労省田中氏
A「具体的にどの職業というのはないが、例えば大相撲力士のように男性でないとできない職業があり、「その職業がやりたいがためだけに、性同一性障害と関係なく審判を受けたい(性別を変更したい)というのはダメ」という意味。」
ESTO黒岩氏
Q「結果は最終的には裁判官の判断と言うことだが、どういう条件がそろえばこういう判断をする、など、ガイドラインのようなものを、内部だけではなく、当事者にも公表できないか?」
厚労省田中氏
A「施行前の現段階では無理。施行後、混乱していることが分かってきたら、厚労省だけでなく何らかの対処が必要である。」
GIDしずおか代表会津氏
Q「現段階で、特例法の5要件を満たしていない人でも、要件の問題性を世に問う意味で(子供のいたり婚姻している当事者でも)診断書は書いてもらえるか?」
塚田精神科医
A「診断書を書くことは出来るが、それが通るかどうかは裁判所の判断。」
司会立華氏
Q「精神科の医師として切実だと思うが、診断書の作成費用は?」
阿部精神科医
A「作成するのに4時間掛かったので料金は考えている。成年後見制度の鑑定は10万円ぐらいだが、10万円とは言わないが通常の診断書料では書けないだろう」
塚田精神科医
A「うちでは通常の診断書料になると思うが、障害者年金の5万円くらいになるかもしれない。」
司会立華
Q「FTMの外性器の手術による性的な快感は?」
原科形成外科医
A「陰核下位神経が細く回復が良くない場合が多いので、その奥まで辿って接続したほうがよいと思う。」
シンポ司会立華
Q「半陰陽の人は除外されてしまうのではないか、またアイデンティティが揺らぐという問題があるが?」
塚田精神科医
A「 例えば赤ちゃんの時に手術を受けて女の子として暮らしてきたけど、思春期以降に精神鑑定でアイデンティティが男性という方も多く、一度訂正をした人を除外して良いのかは疑問で、チャンスはあるべきだと思う。法律がどうなってくるかは分からない。」
大島弁護士
A「半陰陽の方は特例法ではなく、過去に実績があるので憲法113条の方で訂正可能。」
原科形成外科医
A「半陰陽の方を今まで診ていて、精神的な部分だけでなく、外性器など肉体的な部分でも非常に落ち込んでいる人が多い。手術を受けない方には、精神的に楽になる例もあるので気楽に相談して欲しいと提案したい。」
会場からの質疑応答など  
会場より
Q「診断書にある、本人以外の情報提供者という項目は、書いてある場合と書いてない場合で裁判所の判断に差が出てくる可能性があるので、削除または備考欄としてもらいたいのだが?」
厚労省田中氏
A「この参考様式は既に通知として出してしまっている。但し、この欄は「なし」と書くのもありで、「本人以外の情報提供者がいないケースはしばしばある」と裁判所には伝えてある。また現在作成している記載例を出せればと思っている。」
会場より
Q「治療の正当性・妥当性とは?」
阿部精神科医
A「正当性については、困っている様子があって、治療によって癒された、改善されたということ。妥当性もそれについてくる。」
塚田精神科医
A「SRSの診断書記載例に、「手術によって生殖線の機能は永続的に失われ、性器に対する違和感は除去され、また公衆浴場での入浴、海水浴など生活の質は格段に向上したことから、性別適合手術は正当である」とある。治療によって経過が良かったかどうかが正当性・妥当性の証明になる。」
河村精神科医
Q「診断書作成は、成年後見制度と大体同じ労力がかかる。診断書の書き方が多くの精神科医に知れ渡れば、特定の精神科医だけがやたらと忙しいという状況は改善されるのではないか。」
閉会の挨拶 14時00分~  
gid.jp代表山本蘭
「性別変更できる方はどんどん申し立てをして幸せになって欲しい。そういう方が増えるほど、次の改正への力になる。当事者が性別を変更できれば幸せになれるということをぜひ証明してほしい。また変更後はバックラッシュが起こらないにように、くれぐれも問題(特に性的な問題)を起こさないで欲しい。これから私達は、子無し要件の撤廃、健康保険適用などに取り組んでいきたい。」
17時45分 閉会  
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