性同一性障害の身体的治療に対する健康保険適用や医療に関連する要望書|厚生労働省

性同一性障害の身体的治療に対する健康保険適用や医療に関連する要望書|厚生労働省

Posted by jimukyoku 日時 2017/03/22

Share:


2017年3月22日、一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会は、厚生労働省に対し、性同一性障害の身体的治療に対する健康保険適用や医療に関連する要望書を提出しました。
提出した要望書の内容をみなさまにお知らせします。

なお、この要望書はGID学会および、関連4学会(公益社団法人日本精神神経学会、一般社団法人日本形成外科学会、公益社団法人日本産婦人科学会、一般社団法人日本泌尿器科学会)との共同提出となりました。GID学会と関連4学会が提出した要望書(PDFファイル)も合わせて公開いたします。


厚生労働大臣 塩崎 恭久 様
厚生労働副大臣 古屋 範子 様

【要望の要旨】

  1. 性同一性障害の治療における性別適合手術について、健康保険の対象とするようお願い申 し上げます。
    また、卵巣摘出など既に診療報酬の対象となっている技法については、性同一性障害を対象とする適用の拡大をお願い致します。
  2. 性同一性障害の治療に用いるホルモン製剤に対して健康保険の適用をお願い致します。
  3. 東北地方や四国など性同一性障害の治療を行える医療機関が無い地域が存在します。
    国立病院機構や国立大学法人の付属病院等で、少なくとも精神療法やホルモン療法の治療が受けられるようにしてください。
  4. 性別適合手術手術を終えている性同一性障害当事者の健康保険被保険者証の性別は、現在の身体の状態に合わせることを可としてください。
  5. 先頃、健康保険被保険者証の名前表記について、通称でも可である通知が出されましたが、これを保険事業者任せにせず、どこの事業者であっても可になるようにしてください。
    性別の裏面記載についても同様にお願い致します。

【要望の理由】

平素は、性同一性障害の問題にご尽力いただき、心より御礼申し上げます。
私たちは、全国に1600名の会員を有する性同一性障害の当事者団体です。

現在、性同一性障害の治療については、精神療法のみが健康保険の適用であり、ホルモン療法および手術療法およびに関しては適用されていません。
昨年(平成28年)の性同一性障害特例法による性別の取扱いの変更者数は885名、累計で6,906 名にも達していますが、これらの人々は特例法の要件を満たすために皆100万円以上の費用をかけて性別適合手術を行っています。
性同一性障害の当事者には、性別の記載などが問題となって就労がままならず、アルバイトや派遣など不安定な生活を余儀なくされている当事者も多く、健康保険が適用されないため治療に対する金銭的負担は、非常に重いものとなっています。厚生労働省では、従来当会や学会からの要望に対して「美容整形との区別がついていない」と回答してきました。そのため日本精神神経学会やGID(性同一性障害)学会では専門医の育成・認定や医療機関の認定などに取組み、成果を上げてきています。
あらゆる医療機関での保険適用がすぐに困難であるなら、当面こうした認定医や認定医療機関での治療についてのみ適用するということでもお願いできないでしょうか。
また、卵巣摘出などすでに診療報酬の対象となっている技法については、その適用範囲の追加のみで行えます。ぜひ早急な対応をお願い致します。

次に、性同一性障害の治療、特に手術療法が可能な医療機関は札幌医科大学病院、山梨大学附属病院、岡山大学病院、沖縄中部病院などごく限られています。また、治療の基礎となる精神療法やホルモン療法においても東北地方や四国には医療機関が存在せず、性同一性障害の当事者は非常に苦労しています。
国立病院機構や国立大学法人の付属病院あるいは公立病院等公共の医療機関で、少なくとも精神療法やホルモン療法の治療が受けられるよう、医療機関の拡充に務めてくださるようお願い致します。

また、健康保被険者証の姓名表記が、本年2月に通称でも可との通知が出ました。
これは当事者にとって非常にありがたい内容ですが、対応は保険事業者任せとなっており、同じ国民健康保険であっても市町村によって対応が異なっています。これでは居住地や就業先によって不公平が生じます。平成24年に性別の裏面表記を可とした際も同様でした。これらは事業者任せにせず、国として統一した対応を望みます。
また、性別適合手術を終えていて、特例法の要件を満たさないなどの理由で性別の取扱いの変更を行っていない者は、身体だけで言えば性別の取扱いの変更を行った者となんら変わらず、むしろ性別の取扱いの変更を終えた者として扱った方が望ましいとさえ言えます。
健康保険被保険者証の通称記載が可で本人確認書類としてそれで問題ないのであれば、性別を戸籍の続柄に一致させる必要性も無いはずです。医学的に正しい診断を下すためにも、性別適合手術を終えた者には、現在の身体の状態に合わせた記載を可とすることを望みます。

性同一性障害の当事者が、安全・安心な治療を受けることができれば、当事者の円滑な社会適応を促進し、結果として日本の社会や財政への貢献となります。
ぜひご検討をいただき、この問題の更なる解決に、ご助力いただきたくお願い申し上げます。

平成29年3月22日
一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会
代表 山本 蘭