性同一性障害の児童生徒への対応に関する要望書2013|文部科学省

性同一性障害の児童生徒への対応に関する要望書2013|文部科学省

Posted by jimukyoku 日時 2013/11/21

Share:


2013年11月21日、一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会は、文部科学省に対し、性同一性障害の児童生徒への対応に関する要望書を提出しました。
提出した要望書の内容をみなさまにお知らせします。


文部科学大臣 下村 博文 様

【要望の要旨】

  1. 現状の実態調査を行ってください。
    *当事者の数や現状の各校の対応、通知の周知程度など特に、文科省通知が示した「児童生徒への教育相談の徹底」が、各現場で具体的に取り組まれているのかどうかの調査や検証。
    *教員・保護者・非当事者の児童生徒の性同一性障害に対する意識調査など。
  2. 医師や教育関係者、研究者、当事者などを交えた検討委員会を設置してください。
  3. 教育機関における、当事者の受入に関する指針を策定してください。
  4. 教員など教育関係者に対するマニュアルやガイドブックを作成してください。
    *ホルモン療法でどのように身体が変化するかなど、正しい知識が必要です。
    *現在当会で先行してガイドブックを作成中です。本ガイドブックを採用いただければ幸いです。
  5. 教員など教育関係者に対する性同一性障害に関する研修を実施してください。
    *特に、まず指導的立場にある教育委員会や管理職の理解を図るために、講習などが必要と思われます。
  6. 性同一性障害について研修や訓練を受けたスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを準備し、随時各校を巡回させてください。
  7. 児童生徒に対して性同一性障害に関する正しい知識の教育を行ってください。
    *教材や指導案の作成、指導要領への記載
  8. 学校において、児童生徒が気やすく相談や支援を受けることができる環境を整備してください。
    *学校側が、性同一性障害を受け入れているという印象を児童生徒に与えることが肝要です。
  9. 性同一性障害当事者の教師を積極的に活用してください。*現在、教師として活躍している性同一性障害の当事者がいます。当事者の気持ちと教育の双方を理解できる貴重な人材となるでしょう。
  10. 文部科学省あるいは教育委員会などに、各校を指導・支援する体制を作ってください。
    *各校からの問い合わせなどに、的確な回答や指導ができる体制が必要です。
  11. 同性愛など他の概念と一括りにするような教育や施策は行わないでください。
    *「セクシュアルマイノリティ」や「LGBT」というような言葉で、同性愛と性同一性障害を一括りにして扱う取組みが一部で行われています。しかしながら、医学上の疾患である性同一性障害とそうではない同性愛とは別の概念ですし、そもそも抱えている問題も困難さもその対応方法も全く異なります。多様なセクシュアリティのありようを大切にする取組は重要ですが、同性愛と混同したり、一括りにするような教育や施策は、絶対に行わないでいただきたくお願い申し上げます。

【要望の理由】

平素は、性同一性障害の問題にご尽力いただき、心より御礼申し上げます。
私たちは、全国に1300名の会員を有する性同一性障害の当事者団体です。
性同一性障害とは、身体上の性、社会生活上の性と精神の性が一致しないことにより、多大な苦痛・苦悩を有する状態のことをいいます。

現在では「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され、一定の条件を満たす者につき、戸籍の性別の取扱いの変更を申し立てることが可能となりました。
しかしながら、性別の取扱いの変更を行うには、性同一性障害特例法により20歳以上であることが要件になっており、児童生徒は対象になっていません。

当事者である児童生徒は制服に嫌悪感を示し、それが元で不登校になる者がいます。
また、トイレや男女別施設の利用、男女別グループの作成、修学旅行など、学校生活における様々な局面において苦痛・苦悩を感じており、思春期という、人生の中でもっとも多くの経験をし、一番成長しなければならない時期に、自然に確保されている条件が満たされず、本来の発達が困難になっております。
岡山大学の最近の調査においては、性同一性障害により、不登校を経験した者24.5%、自殺を考えた事がある者が68.7%、自傷・自殺未遂経験者は20.6%と有意に高い数字を示しています。

こうした事態に対処するため、日本精神神経学会は昨年1月「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」第4版において、第2次性徴を抑制する治療と、条件付きながら望みの性での ホルモン療法を15歳から認める旨改訂を行いました。
この改訂ガイドラインは既に実施され、ホルモンを投与した当事者が通学し始めていますが、教育現場での対応はほとんど進んでいません。逆に、学校側からホルモン療法は行わないようにという指導がなされた例も存在しています。

文部科学省は平成22年4月23日に「児童生徒が抱える問題に対しての教育相談の徹底について」の事務連絡において、性同一性障害の児童生徒に対して「児童生徒の心情に十分配慮した対応をお願いします。」との通知を行いました。
しかしながら、具体的にどのような対応を行えば良いのかは明示されておらず、本人の希望とは相反する対応がなされるような事例も報告されています。
この中には、退学を勧められたというひどい事例すら存在します。
これらは、性同一性障害の児童生徒を教育機関がどのように受け入れ、対応するかについて、国が指針を示していないことや教育関係者の理解不足などに起因しています。
更には、この通知が周知されていない学校さえ存在しています。この問題は、待ったなしのところまで来ています。このまま放置してよいはずはありません。

ぜひご検討をいただき、この問題の更なる解決に、ご助力いただきたくお願い申し上げます。

平成25年11月21日
一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会
代表 山本 蘭