健康保険適用に関する要望書を提出2011|厚生労働省

健康保険適用に関する要望書を提出2011|厚生労働省

Posted by jimukyoku 日時 2011/12/07

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一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会は、2010年11月18日に日本精神神経学会・日本形成外科学会・日本泌尿器科学会・日本産科婦人科学会の4学会が合同で要望書を提出したこと呼応し、2011年2月に引き続き、厚生労働省に対し性同一性障害の身体的治療に関する要望書を提出いたしました。


性同一性障害の治療に対する健康保険適用に関する要望書

 

厚生労働大臣 小宮山 洋子 様

要望内容

下記の性同一性障害治療における性別適合手術およびホルモン療法に対して健康保険の適用をお願い致します。

  1. 女性から男性に性別を移行する性同一性障害の患者に対する乳房切除、子宮卵巣摘出、 尿道延長、陰茎形成などの性別適合手術
  2. 男性から女性に性別を移行する性同一性障害の患者に対する除睾、陰茎切断、造膣、 陰唇・陰核形成などの性別適合手術
  3. 女性から男性に性別を移行する性同一性障害の患者に対する男性ホルモン治療
  4. 男性から女性に性別を移行する性同一性障害の患者に対する女性ホルモン治療

要望の理由

平素は、性同一性障害の問題にご尽力いただき、心より御礼申し上げます。
私たちは、全国に1000名の会員を有する性同一性障害の当事者団体です。
性同一性障害とは、身体上の性、社会生活上の性と精神の性が一致しないことにより、多大な苦痛・苦悩を有する状態のことをいいます。岡山大学の最近の調査において、性同一性障害により、不登校を経験した者24.5%、自殺を考えた事がある者が68.7%、自傷・自殺未遂経験者は20.6%と有意に高い数字を示しています。
2004年7月には「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され、一定の条件を満たす者につき、戸籍の性別変更の申し立てが可能となりました。また、2008年6月には改正が行われ、2010年末までに性別変更を行った者は2238名に達しています。

しかしながら、特例法の成立、改正だけで、私たちの問題がすべて解決したわけではありません。特に性別の変更を行うためには、性同一性障害特例法において性器の手術が義務づけられているにもかかわらず、健康保険の対象になっていません。このため、高額な治療費を当事者は自費で全額負担しなければなりません。
ホルモン療法は一度始めるとほぼ生涯続ける必要性があり、中断すると骨粗鬆症などの重篤な疾患を併発する可能性もあります。そのため、トータルの負担は過大なものとなってしまいます。
性同一性障害の当事者は、性別の記載が問題となって就労がままならず、アルバイトや派遣など不安定な生活を余儀なくされている当事者も多く、手術やホルモン療法に対する金銭的負担は、非常に重いものとなっています。更に東日本大震災の発生は、特に雇用に関して現地の当事者を直撃しました。

また、現在年間500名以上が性別適合手術を受けていると考えられていますが、この内、国内の正規ジェンダークリニックで手術を受けることができた人は2割にも満たず、タイなどの海外での治療に頼らざるを得ないという現状があります。
このように、現在、国内で手術治療のできる医療機関は限定されていますが、これは健康保険適用がなされることによって治療が可能な医療機関が増え、改善されることが見込まれています。更に、性別適合手術とほぼ同等の手術を伴うような他の疾患に対する治療には健康保険が適用されています。性同一性障害も、同様に疾患であることには変わりはありません。にもかかわらず、どうして性同一性障害の治療は保険適用の適用外とされるのでしょうか。
現に性別変更が可能な欧米各国では、保険診療や国からの補助が実現しています。

私たちは、すでに2009年より民主党幹事長室を通して、性同一性障害に関する厚生労働分野における要望書を提出させていただきました。しかしながら、一向に前進しておりません。
財源が苦しい折であることは充分承知しておりますが、どうか苦しんでいる当事者をこのまま見捨てないでください。
ぜひご検討をいただき、この問題の更なる解決に、ご助力いただきたくお願い申し上げます。

平成23年12月7日
一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会
代表 山本 蘭