性別を変えた性同一性障害の夫の子を、妻が出産しても婚外子扱いする件に関する声明文

性別を変えた性同一性障害の夫の子を、妻が出産しても婚外子扱いする件に関する声明文

Posted by jimukyoku 日時 2010/01/13

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2010年1月13日、性同一性障害をかかえる人々が、普通にくらせる社会をめざす会(gid.jp)では、法務大臣、厚生労働大臣、総務大臣、文部科学大臣、外務大臣に対し、性同一性障害に関する施策の拡充を求め、要望書を国会内の民主党幹事長室において提出いたしました。
要望は法務省に対するもの8項目、厚労省に対するもの13項目、総務省に対するもの5項目、文科省に対するもの8項目、外務省に対するもの1項目の35項目になります。
要望書を提出した後に開いた記者会見で発表した声明文をみなさまにお知らせします。


2010年10日に新聞各紙・テレビにおいて、法務省が、性別を変えた性同一性障害の夫の子を、妻が出産しても婚外子扱いするという記事が掲載されました。

本件については昨年11月よりこの当事者の方とお話しし、対応を考えてきましたし、同様の疑問は2年以上前から複数の当事者の方から質問を受け、法務省には確認を入れていたのですが、実際に申請されてから検討するという返事で、いままで保留となっていました。今回、法務省が通達を出したことでそれが不可とされたわけですが、千葉大臣の素早い対応により、見直されることとなりました。
大臣の英断に感謝すると同時に、敬意を表します。

そもそも法務省は、婚姻中に妊娠した子について、今まで遺伝上のつながりが無くても民法772条の「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」条項を元に、かたくなに夫以外の者を父とすることを拒んでいました。このため、離婚後300日以内に出産した子が、婚姻中に妊娠していれば夫以外の者を登録できず、結果無戸籍となる問題も生じています。このように、民法では法的に結婚した夫婦の間に生まれた子を嫡出子と定義しているものかかわらず、本件にだけ適用しないのは明らかに無理があります。

しかし、何故この問題が起きたのかを考えると、それは、戸籍上に性同一性障害であり、性別変更したことが、いつまでも記載され続けるからです。
これは、「平成15年法律第111号3条による裁判発効日」として記載されています。
この記載は、転籍しようが結婚して新戸籍ができようが転記されて戸籍上いつまでも載り続けることになります。(戸籍法施行規則第39条1項9号)。法務省では「性別変更」という直接的な記載にしなったことで配慮したつもりなのですが、インターネットで調べればすぐにその意味が判ってしまいますから、何の配慮にもなっていません。
そのため、会では子が自分の出自を知る権利のことも考え、一時容認もやむなしという声も聞かれました。

この記載さえ無くなれば、父が性同一性障害の当事者であるかどうかは判りませんから、問題なく嫡出子として受理されることになるでしょう。逆に、この記載を残したままでは、父が遺伝上の父ではないことが一目瞭然で判ってしまいますから不充分です。性別変更した事実は、新戸籍が作られた戸籍があれば証明できますから、それを以後転記する必要性は全くありません。

更に、この嫡出子の問題だけではなく、当事者は、いつまで経っても自分が性同一性障害であることを暴露される危険に晒されています。
また結婚した配偶者やその子など同一戸籍に掲載される可能性のある全ての人に影響を及ぼす重大な人権問題です。
特例法で性別変更を行った際に新戸籍を作ることになったのは、同一戸籍上にある人への影響を無くすためだったはずなのに、実際はそうなっていません。
千葉大臣および法務省の方々におかれましては、要望書にも記載いたしましたが、転籍などで戸籍が変わった際には「平成15年法律第111条3条による裁判発効日」の記載を転記しないよう、戸籍法施行規則を変更していただくよう要望いたします。
また、性別を変えた性同一性障害の夫の子を嫡出子とすることを正式に認めていただけるよう、お願い申し上げます。
私達は、何も特別なことを願っているわけではありません。普通の男性や女性と同じように生きたいし、扱って欲しい。それが望みの全てなのです。

性同一性障害をかかえる人々が、普通にくらせる社会をめざす会
代表 山本 蘭