2004年特例法に関する施行状況調査
性同一性障害者の性別の取り扱いの特例法に関する法律 施行状況調査(~2004年10月11月)
2004年7月16日より 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され 約4ヶ月が過ぎました。
本団体では、全国でどの程度の申立てが家裁に出され、許可が出ているか、また申立件数や、許可・却下の判断に地域格差はないかなどについて、本年10月から11月にかけて全国の家庭裁判所の御理解とご協力のもと調査を行ってまいりました。このほど集計がまとまりましたので、発表致します。
「2004年特例法に関する施行状況調査結果についての公式見解」
性同一性障害者の性別の取扱いに関する特例の法律が本年7月16日に施行され、性同一性障害を有する者の性別更正が実現するようになってきました。施行後4ヶ月を経過して、私たちが各地の家庭裁判所の協力を得て、独自に状況を調査した結果、申立て100件と、52件の認容が確認されました。これによって、52名の当事者が性別更正を終え、新しい性として人生を踏み出して行かれたことになります。
画期的なのは、このうち却下された例が1件もないことです(取下げは1件)。このことは非常に喜ばしいことであり、私たち当事者にとっては朗報となりました。本法律の成立に尽力くださった議員の皆様、法務省・厚生労働省をはじめとした行政の皆様、日本精神神経学会をはじめとする医師の皆様、法曹界の皆様、マスコミ関係の皆様他関係者各位に改めて厚く御礼申し上げます。
しかし喜んでばかりはいられない状況があります。性同一性障害の当事者は、医療機関で診断を受けた方だけでも全国に約3000人おり、この数は毎年増えています。実数は更に多いと推定されています。これに対して性別の更正ができた方は52人と、未だ全体の1%台にとどまっています。今後申立て件数が増えるとしても、まだまだ多くの当事者が性別更正の適用外に残されることになってしまいます。特例法の要件を満たせない方、性別適合手術までは望まない方、治療途中の方など多くの当事者にとっては、まだまだ苦しみが続くのです。
特例法の施行やマスコミ報道などによって「性同一性障害」という言葉はかなり浸透はいたしました。しかしなら、就労の際や教育現場において発生する無理解や強制など、まだまだ性同一性障害に対する差別や偏見は数多く残されています。また、性別更正ができたとしても、「性別を更正した」という事実は戸籍上残ってしまうため、これを原因として差別を引き起こす可能性は充分にあります。
特例法には「2名以上の医師の診断書」「20歳以上」「現に婚姻していない」「現に子がいない」「生殖腺の除去」「外性器が他の性のものに近似している」という要件があります。このなかでも特に 「現に子がいないこと」 という要件は、子供のいる当事者にとって、非常に過酷で厳しい要件となっています。子供がいるという事実は、今更どうにもできません。この要件が付けられたのは「子の福祉のため」と説明されていますが、現に父親であった者が女に、母親であった者が男に「既に変わってしまっている」という事実は変えることができません。逆に、今母親なのに戸籍が「男性」である、今、父親なのに戸籍が「女性」であることが、親にとっても子供にとっても不利益となっているのです。そして、なにより親の性別変更を求めているのは、その子供自体であることも多く、子供を健全に育てるためにこそ親の性別更正が必要なのです。
このように親が性別を更正することについては何ら問題がないだけでなく、親子共に一番福祉に叶うことなのです。この「現に子がいないこと」という要件は、何をおいても最初に撤廃しなければなりません。
私たちは今後も特例法の「現に子がいないこと」要件の撤廃を含む要件の緩和や、性同一性障害を抱える者に対する差別や偏見が無くなり、普通にくらせる社会が来るように活動を続けてまいります。今後とも、ご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。