性同一性障害当事者の労働環境の改善を求める要望書|厚生労働省

性同一性障害当事者の労働環境の改善を求める要望書|厚生労働省

Posted by jimukyoku 日時 2017/03/22

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2013年4月23日、一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会は、厚生労働省に対し、性同一性障害当事者の労働環境の改善を求める要望書を提出しました。
提出した要望書の内容をみなさまにお知らせします。


厚生労働大臣 塩崎 恭久 様
厚生労働副大臣 古屋 範子 様

【要望の要旨】

  1. 性同一性障害の当事者が、職場において不利益を受けたりストレスを感じたりしないような 労働環境を整備するために、言動やトイレや更衣室の利用、あるいは健康診断など配慮するすべき内容と対応をまとめた指針の策定をお願い致します。
  2. 性同一性障害の当事者が、職場において自分の性別について他者に告げることを強要されたり、同意無く公開されたりしないようにしてください。
  3. 就業中に望みの性で生活をするRLE(リアル・ライフ・エクスペリエンス)実施を、保障してください。
  4. 性同一性障害に対して具体的な不利益や差別が起きた際に対応できるよう、労働基準監督署等での相談体制の拡充と是正指導措置や救済措置づくりをお願いいたします。
  5. JIS履歴書・高校統一応募用紙およびハローワークの求職票から性別欄を削除してください。
  6. 企業に対する啓発のため、冊子の制作や講演会等を実施してください。
  7. 最近LGBTや性的少数者という形で同性愛や他のセクシュアリティと一括りにして扱われることが増えていますが、性同一性障害はあくまでも疾患であり福祉の観点で取り組むべき課題です。同性愛とは問題のあり方も対応も異なりますので、区別していただけるようお願い申し上げます。

【要望の理由】

平素は、性同一性障害の問題にご尽力いただき、心より御礼申し上げます。
私たちは、全国に1600名の会員を有する性同一性障害の当事者団体です。

性同一性障害の当事者にとって、就労は大きな壁です。
アルバイトや派遣などで就労している当事者は多く、生活が苦しい状況が続いており、そのために治療が進まない→社会適応が進まないという悪循環に陥ってしまいます。
中には生活保護を受けざるを得なくなる当事者もいます。

特に性別の取扱いの変更を受けていない当事者にとって、新たな職を探すことは大きな困難が伴います。
ことに、履歴書の性別欄の記載に抵抗があります。この履歴書の定型はJISで定められていますが、男女雇用機会均等法によって男女別の採用がごく一部の職種を除いて認められていない現状では、本来必要のない項目と言えます。
履歴書からは、過去にも本籍欄や家族欄が削除されました。この性別欄も同様に就職には必要のない項目です。性同一性障害の当事者のためにも、そして男女共同参画社会の実現のためにも、このJIS履歴書や高校統一応募用紙から性別欄の削除をお願い申し上げます。

また、すでに就労している場合においても、職場で性別移行を行うことは難しく、日本精神神経学会が定めた「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」において、性別変更前に一定の期間望みの性で生活をするRLE(リアル・ライフ・エクスペリエンス)を実施することが奨励されているにもかかわらず、多くの企業・団体においては、その実施が認められていない状況であるだけでなく、このために退職に追い込まれる当事者も後を絶ちません。

厚生労働省では本年1月に施行された「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(いわゆるセクハラ指針)において、「被害を受けた者(以下「被害者」という。)の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。」と定めました。
また、「性的な言動」とは、「性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等」があげられています。
報道によれば一昨年、経済産業省の性同一性障害の職員が職場でのカムアウトを強要された事に対し訴えを起こしていますし、昨年3月にも愛知ヤクルト工場の性同一性障害の社員が性同一性障害であることを告知することを強要された事に対して訴訟が行われています。このように本人が希望しないにもかかわらず公開されるあるいは告知を強要されることは、指針にそって考えればセクハラに該当するものと言えます。
いずれにせよ、性同一性障害の当事者が職場において不利益を受けたりストレスを感じたりしないような労働環境を整備することは急務です。そのために言動やトイレや更衣室の利用、あるいは健康診断など配慮するすべき内容と対応をまとめた指針の策定が望まれます。

働く意欲も能力もあるのに、それが活かされないのは社会にとって大きな損失です。
ぜひご検討をいただき、性同一性障害の当事者の労働環境の改善に、ご助力いただきたくお願い申し上げます。

平成29年3月22日
一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会
代表 山本 蘭