性同一性障害特例法の再改正および戸籍記載等に関する要望書2013|法務省

性同一性障害特例法の再改正および戸籍記載等に関する要望書2013|法務省

Posted by jimukyoku 日時 2013/11/14

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2013年11月14日、一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会は、法務省に対し、性同一性障害特例法の再改正および戸籍記載等に関する要望書を提出しました。
提出した要望書の内容をみなさまにお知らせします。


法務大臣 谷垣 禎一 様

【要望の要旨】

  1. 性同一性障害特例法第3条1項3号の「現に未成年の子がいないこと」条文を削除してください。
  2. 性同一性障害特例法第3条1項2号の「現に婚姻していないこと」条文を削除してください。
  3. 結婚や転籍などにより新戸籍が編制されても、戸籍の身分事項に必ず記載されてしまう 「平成15年法律第111号3条による裁判発効日」の記載を削除してください。(戸籍法施行規則第39条1項9号の削除)
  4. 女性から男性に性別の取扱いを変更した当事者が、戸籍変更後に婚姻してできた妻の子は、嫡出子として扱ってください。

【要望の理由】

平素は、性同一性障害の問題にご尽力いただき、心より御礼申し上げます。
私たちは、全国に1300名の会員を有する性同一性障害の当事者団体です。

平成15年7月には「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下特例法)が成立し、一定の条件を満たす者につき、戸籍の性別の取扱いの変更の申し立てが可能となり、また、平成20年6月には改正が行われ、子どもを持つ当事者でも、子が成人していれば性別変更ができることになりました。
その結果、昨年末までに性別の取扱いの変更を行った者は3584名に達しました。これも、大臣を始め政府のみなさまや国会議員のみなさまにご尽力いただきましたおかけであり、深く感謝申し上げます。

この特例法の成立から今年でちょうど10年、改正からも5年が経過致します。
特例法では、その附則3に「性同一性障害者の性別の取扱いの変更の審判の制度については、この法律による改正後の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の施行の状況を踏まえ、性同一性障害者及びその関係者の状況その他の事情を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする。」と規定されています。
本法律は成立当時より未対応な項目があり、10年を期にぜひ再改正をお願いいたしたく、ここに要望申し上げます。

特に第3条1項3号の「現に未成年の子がいないこと」の要件は、成立当時より問題になっていた項目で、「現に子がいないこと」より改正されたとはいえ、まだまだ不十分です。
成立前から何度も主張しているように、親が性別の取扱いの変更を行ったからと言って、子に悪影響がおよぶわけではなく、むしろ身体もすでに変わり、親としての役割も変わっている状態においては、性別変更はその地位を強化することにつながり、子にとっては逆に好影響を与えます。また、性別変更により、親の精神状態や雇用の安定化につながり、これも子にとっては望ましい結果を生みます。

また、「現に婚姻していないこと」により、現在、婚姻している当事者は、婚姻を継続するか、離婚して性別の取扱いの変更を行うかの二者択一を迫られることになります。
これは、国が離婚を強要することに等しいものです。
同じように同性婚が認められていないドイツにおいて、平成19年に「婚姻していないことを要件にすると、婚姻中の性同一性障害者に配偶者との離婚を求めることは、性同一性障害者の当事者のみならず、配偶者も著しい侵害を被る。」という考えから、婚姻していても性別の取扱いの変更ができるようになりました。
また、この要件は、同性婚を避けるためと説明されてきましたが、特例法においては「性同一性障害特例法第4条第2項に「法律に別段の定めがある場合を除き、性別の取扱いの変更の審判前に生じた身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない。」とあり、婚姻が成立したのは性別の取扱いの変更の前であり、同性婚にはあたらないし、将来的な同性婚実現への先鞭となるものではありません。

更に、性別の取扱いの変更を行うと、その事実が結婚や転籍などにより戸籍が新たに編制されても、身分事項欄に「平成15年法律第111号3条による裁判発効日」の記載が残ってしまいます。これは、戸籍を見ただけでその当人が性同一性障害であるということがわかってしまうということであり、当事者のみならず同一戸籍上に記載されている家族に対しても苦痛を与えています。これにより昨年11月に、この記載から性同一性障害であることがわかり、ゴルフ場の入会を拒否されるという事件も引き起こしました。
法務省は、重要な身分事項の変更は、移記することになっていると説明していますが、性別の取扱いを変更したかどうかは変更時の戸籍で証明でき、移記する必然性はありません。また、法務省では、「主な人権課題」として「性同一性障害」を取り上げており、人権への理解を訴えていますが、実際には法務省自身が戸籍に記載を残すことにより、人権侵害を起こしているのです。

女性から男性に性別の取扱いを変更した当事者の子の問題は現在裁判になっていますが、裁判ではこの扱いを容認する審判が下されています。もはや、法律によって救済するしかありません。確かに、当事者の遺伝的つながりはないかもしれません。しかし、例えば野田聖子さんの例のように、遺伝的なつながりが必ずしも親子関係に結びつくわけではありません。
特に、すでに一旦嫡出子として登録されていたのに、2年も経ってから職権で父親欄を空白にされた例は、あまりにもこの親子の心情を無視したやり方と言わざるを得ません。親子関係は、遺伝的なつながりよりも、「誰が子を持とうと思ったのか」という、その意思を一番に尊重するべきではないでしょうか。それが、良好な親子関係にもつながるのです。

日本国憲法にも、第16条に「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とあります。特例法の「現に未成年の子がいないこと」や「現に婚姻していないこと」の要件を削除しても、また、女性から男性に性別の取扱いを変更した当事者の子の戸籍の「平成15年法律第111号3条による裁判発効日」の記載を移記しなくても、誰も困ることは無いし、公共の福祉にも反しません。 最も大切なのは人の幸せであり、表記やシステムではありません。

ぜひご検討をいただき、この問題の更なる解決に、ご助力いただきたくお願い申し上げます。

平成25年11月14日
一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会
代表 山本 蘭