旅券(パスポート)の性別欄に関する要望書の提出2003|外務省
性同一性障害を有する者が、性別欄があることにより大きな困難に直面する問題の一つに、旅券(パスポート)があります。
海外に渡航すれば、旅券が唯一の本人の公証手段となります。ところが性同一性障害をかかえる者は、旅券に記載された性別と実際の容姿が一致せず、本人であることを疑われる結果になります。このため、トラブルになるだけでなく、嘲笑の対象になったり、地域によってはヘイトクライム(憎悪犯罪)によって殺されかねない事態も生じる可能性があります。
gid.jpではメーリングリストに投稿されたこの旅券の性別記載によりトラブルに巻き込まれた当事者の方の投稿をきっかけとして、外務省に要望書を送ることにしました。要望書は、外務省のホームページに開設されている「ご意見・ご感想の募集コーナー」からの投稿という形で行いました。
この方法では、外務省に声が届かないのではと考えがちですが、アメリカなどでは市民運動のひとつの方法として、FAXを用いて一斉に多くの人が同じ要望を行うという方法が定着しており、かなりの成果を上げることができることがわかっています。
外務省のHPでも、要望の多かった項目についてはHP自体でも紹介するなど、力を入れているようにも思えます。実際過去に会員の方が何回か投稿した際には、外務省より電話連絡があったこともあるようです。
こうして10月8日の夜、会員全員に呼びかけを行い、一斉に要望書を送信しました。こうした動きができるのも、多くの方が参加し、メーリングリストで常に活発な議論が行われているgid.jpのメリットの一つでもあるように思います。
送信にあたっては、信頼性を増すために必ず一人一回に限定することなどの条件を付けました。今回はとりあえず1回目を行いましたが、引き続き2度3度と繰り返し、効果を高めていきたいと考えています。また、同様のアピールを他の項目でも順次おこなっていくことを予定をしています。
要 望 書
外務省担当者 様
私は、性同一性障害の当事者です。
本日は旅券(パスポート)の性別記載について要望があり、メールをいたしました。
現在旅券に記載されている性別は、戸籍の続柄を元に記載されています。しかし、私たち性同一性障害をかかえる者は、戸籍と異なった性で実生活を送っています。このため、旅券に記載された性別と、実際の見た目の性別が異なるという事態が生じています。 これによって、入出国のイミグレーションで本人かどうか疑われてしまうという理不尽な思いをすることが多々あります。また、渡航国ではホテルのチェックイン、トラベラーズチェックやクレジットカードの使用時などにパスポートの提示を求められるこ とがよくありますが、その度ごとに性別表記と外見のギャップからトラブルとなることも間々あります。トラブルまでは行かなくても、嘲笑の対象となることが大変多くあります。
海外では、旅券が唯一の本人の身分を示す公証手段です。旅券の最初のページには「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護援助を与えられるよう、関係の所官に要請する。」とあります。ところが、本人を守ってくれるはずのこの旅券が、逆に本人を危険にさらすことになっているのです。性同一性障害の当時者と知れるとヘクトクライムにより、殺されかねない危険も生じるからです。
戸籍の性別と異なる性で生活を送る、私たち性同一性障害をかかえる者が、より安全に国外に出ることができ、無事に帰国がかなうよう、旅券の性別表記を実態にあわせて変更していただけるよう切にお願いするものです。
私たちの切実な願いをお聞き届け頂けください。
性同一性障害をかかえる人々が、普通にくらせる社会を目指す会(gid.jp)会員
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